Patient Recruitmentのお仕事について紹介します。Patient Recruitmentは比較的新しい職種で日進月歩の開発職です。医薬品開発だけでなくマーケティング、広告など別分野でのスキルを活かせるお仕事です。
- 採用の難易度:
- キャリアの幅:
- 平均的な年収:
Patient Recruitmentのお仕事紹介
Patient Recruitmentは治験に参加する被験者の募集やリクルートメントに特化した臨床開発職です。従来、これらの業務はモニターやクリニカルリードなどの臨床開発職の仕事のひとつとされていることが多く、リクルートメントに特化した専門部隊を持つ会社はまだ少ないのですが、今後需要が増えてくると思われるお仕事です。
医薬品開発の舞台が、生活習慣病をはじめとした患者数が多い疾患から希少疾患や希少ガンに移行しています。このため多くの試験で被験者募集・登録(エンロールメント)に失敗しています。エンロールメントの遅れは医薬品開発のタイムラインやコストに大きく影響します。こうした背景もあり、Patient Recruitmentの仕事が注目されています。
80%の治験が当初予定していたエンロールメントのタイムラインから遅れている
Johnson, Otis. “An evidence-based approach to conducting clinical trial feasibility assessments.” Clinical Investigation 5.5 (2015): 491-499.
40%のオンコロジー治験で最低限必要な被験者数に達成していない
Mendelsohn, John, Harold L. Moses, and Sharyl J. Nass, eds. “A national cancer clinical trials system for the 21st century: reinvigorating the NCI Cooperative Group Program.” (2010).
Patient Reqruitementは治験において被験者リクルートメントの部分でStudy Teamをサポートします。
治験計画段階では対象となる疾患や試験デザインに合った効果的なリクルートメント戦略や計画を立案します。治験実施段階ではその計画を実行します。計画どおりに治験を完了させるために、PRO(Patient Recruitment Organization)などの外部パートナーと協業したり、医療データやSNSなどのテクノロジーを駆使したりして、リクルートメントを進めます。また、被験者をより早く、より多く登録してもらえるように、医療機関のモチベーションを上げるような施策を打つこともあります。
それぞれの治験で被験者リクルートメントの機会や課題がどこにあるのかをStudy Teamとともに特定し、その課題に対して様々な打ち手を考案し、実行するお仕事です。
治験デザイン(プロトコルシナプシス)を見て、罹患率・市場環境・競合品・競合治験の調査を行い、リクルートメントの障害になるものはないか確認します。治験のGo/ no-goにも関わる重要な検証です。
治験の実施が決まると、エンロールメントを計画し予測します。Feasibility調査をもとにエンロールメントに貢献できそうな医療機関を特定し、どの時期に何名の被験者が登録されるかエンロールメントを予測します。また、どのような戦略でタイムラインに合わせて被験者を集められるか、治験ごとにリクルートメントモデルを構築するのもこの時期です。
リクルートメントの観点からStudy Teamにアドバイスすることもあります。例えば、医療現場の実態に合った治験デザインにするために、プロトコルの選択基準・除外基準や治験スケジュールについてインプットし、プロトコルやその他のドキュメントの作成に貢献します。
試験計画時に立てたリクルートメント戦略に基づき、施策を打ちます。施策には広告、PROの活用、患者会や学会との連携、医療機関ネットワークの利用、SMOへの働きかけなど様々なものがあり、費用対効果を考えながらソリューションを選択し活用します。
どんなに準備をしていても思い通りにエンロールメントが進まないことがよくあります。新薬の登場や標準療法の変更など市場環境の変化といったコントロールできないことが原因だったり、調査時には捉えきれず試験が始まってから見つかる問題もあります。どこに課題があるのか検知し、どう解決していくのか試験実施中にもたくさんのチャレンジがあります。
会社が注力している疾患領域の特性に合わせたリクルートメント手法を考案します。また、革新的な(もしくは革新的になる可能性がある)リクルートメント手法やツールをもったベンダーを発掘したり、ベンダーと良好な関係性を構築します。
モニターに向いている人
これまでは医師へのヒアリングを中心に足で稼ぐエンロールメント予測をしていたのですが、データを用いて予測することが多くなっています(ヒアリングも並行して行います)。罹患率などのマスデータ、レセプトデータや自社の過去データなど様々なソースのデータを用いて予測精度を高め、より効果的な施策を打つ能力が今後ますます求められます。
Patient Journeyを考え、ターゲットを選定し、どのような施策を打つかといったマーケティングに似た活動を行います。新聞広告や医療機関に貼るポスターなどのトラディショナルな手法からSNSやインターネットでの広告が主戦場が移っており、特にWebマーケティングに強い人に有利なお仕事です。
トラディショナルな手法はあるものの、より効果的なリクルートメントを目指す場合、決まった手法がなくトライ&エラーを繰り返すことになります。新しい分野ですので、自分が見出した手法が業界のスタンダードにもなり得ます。規制で縛られた医薬品開発の領域では珍しいお仕事です。
Patient Recruitmentになるには?
大学卒が条件となっているケースが多いです。ヘルスケア分野の理系だけでなく、マーケティングなどの文系卒での募集も多いです(医薬品開発ではレアです)。
臨床開発のお仕事で治験に関する基礎的な知識をもっていることに越したことはないですが、一般的なマーケティング、デジタルマーケティング、広告主や広告代理店での経験者で医薬品開発や製薬企業未経験での募集も多数あります。
Patient Recruitmentのキャリアプラン
Patient Recruitment自体が比較的新しい職種なので、どのようにキャリアアップするのかという実績はほとんど聞いたことがありません。ただ、仕事の特徴から相性がよいと思われるキャリアを紹介します。
まずは順当進化として、Patient Recruitmentの担当者からLeadになるキャリアです。一つの試験のエンロールメントから会社全体のエンロールメントに責任が広がり、エンロールメントのプラットフォームを作ったり、外部パートナーと提携したりと会社を代表するような大きな仕事をすることになります。また、グローバル企業の場合は、日本だけでなく様々な国でのリクルートメント活動の責任者となります。国ごとに適したリクルートメントの手法も異なるので、新たな専門性を得ることができます。
エンロールメント施策は臨床開発の中でも重要な仕事なので、モニターリーダーやスタディマネージャーとしても活躍も期待できます。医療機関へのエンゲージメントスキルはSSUでも使えます。
臨床開発以外でも、外部パートナーの新規開拓や提携の経験はアウトソーシングマネジメントに活かせます。マーケティング戦略はポートフォリオマネジメント、データ分析はTrial Insightなどの分析・戦略系のお仕事にも通じており、いずれも医薬品開発職の中でも近年重宝されているお仕事です。
基本職 | 上級職 | |
---|---|---|
臨床開発 | Patient Recruitment モニター SSU | Patient Recruitment Lead/Global モニターリーダー スタディマネージャー |
その他 | アウトソーシングマネジャー ポートフォリオマネジャー Trial Insight |
まとめ
Patient Recruitmentは治験に参加する被験者の募集、リクルートメントに特化したお仕事です。
製薬企業の開発ターゲットが難治性疾患、希少疾患などの被験者リクルートが難しい疾患にシフトしていることもあり、Patient Recruitmentというお仕事が注目され始めています。
最近では被験者リクルートメントの分野でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでおり、SNSやウェブなどのデジタルマーケティングを巧みに使える能力が求められています。従来の医薬品開発職にはないスキルであり、それゆえにマーケティングなどの経験があれば、医薬品開発未経験者でもキャリア採用の募集があります。
これから発展していく分野であり、色々な可能性が広がっています。言い換えるとチャレンジを繰り返し、経験を積めば、この道の第一人者になれます。他の産業で経験を積んだ人が医薬品開発職の入り口とするのもよいですし、専門性を高めて、この分野をリードする人材になる貴重なキャリアを歩むこともできそうです。