臨床開発モニター(CRA)のお仕事、年収は?

モニター(CRA)のお仕事について紹介します。モニターは医薬品開発の入門職です。モニターを経験することによって医薬品開発のキャリアプランの幅が広がります。

  • 採用の難易度:
  • キャリアの幅:
  • 平均的な年収:

臨床開発モニター(CRA)のお仕事紹介

モニターは臨床開発モニターやCRA(Clinical Research Associate)と呼ばれることもあります。医薬品開発職の中ではもっとも人数が多く、大きなCRO(医薬品開発受託機関)では1000人以上のCRAがいます。長い医薬品開発のプロセスの中でも、もっとも時間とお金を要する治験における実働部隊です。治験の現場である医療機関で製薬会社・CROの顔となるのがCRAです。

臨床開発モニターとはどんなお仕事?

モニターは治験の開始から終了まで、モニタリングといわれる業務を担当します。

治験(=臨床試験)は決められた法律や手順に従って行われます。患者さんに治験薬を投与して、その結果を観察し評価するのは医療機関であり、製薬会社ではありません。医薬品開発を行う製薬会社(一般にスポンサーと言われます)は、医療機関で正しく臨床試験が行われているかを確認・担保する責任があり、その活動をモニタリングと呼びます。

モニターはこのモニタリング活動の主役です。モニターは規制や決められた手順どおりに医療機関で治験が行われていることを確認し、適切な品質の治験データをタイムライン通りに入手する責任を持っています。

業界専門用語
  • 治験:臨床試験、クリニカルトライアル(CT:Clinical Trial)、クリニカルスタディ(Clinical Study)
  • スポンサー:治験依頼者、依頼者、Sponsor

臨床開発モニターはどんな役割?

治験開始時

治験を実施する医療機関を選定します。主に2つの面で医療機関を評価して治験を実施できるか判断します。ひとつは治験実施体制で、組織、手順、人、設備が十分整っていることを確認します。もうひとつは被験者エンロールメントの観点です。治験に参加できる基準を満たす患者さんがどのくらいの人数いるか、その医療機関でどのくらいの被験者エントリーを見込めるかを評価します。

治験を実施するためにスポンサーと医療機関とで治験契約を締結します。この契約には治験に係る費用も含まれており、モニターは担当の医療機関で費用交渉をし、条件をまとめて契約締結を主導します。

アオ
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費用には医療機関に支払う研究費の他に、SMO費用、被験者に支払う負担軽減費、保険外併用療養費などがあるよ

  • 必須文書の作成・入手:治験実施に必要な医療機関ごと、国ごとの必須文書を準備・入手します。治験に使う文書を作成し医療機関に提供します。また、医療機関に治験実施のための手続きを進めてもらい、医療機関で作成された必須文書を漏れなく入手します。
  • SIV(Site Initiation Visit)の実施:SIVでは、治験に参加できる被験者の条件、登録手順、治療や検査のスケジュール、評価方法など治験を実施するうえで必要な手順・情報などを医療機関関係者に紹介し、彼らが十分に理解できていることを確認します。分担医師など新たなスタッフが治験に参加する場合には、都度トレーニングを実施します。
治験実施中

モニターはスポンサーと医療機関のリエゾンの役割を担います。スポンサーと医療機関の間でスポンサー側の窓口として働きます。医療機関関係者と密にコミュニケーションをとり、良好な関係を築いて、治験のマイルストンや症例エントリー、データ入力などの成果を出すことを目的とします。また、医療機関の代弁者として社内のStudy Teamに助言や意見をすることもあります。

医療機関でデータの品質や被験者の安全性に影響を与える可能性があるイシューが生じたり、計画からの逸脱が発生した場合は、それを解決する役割を担っています。発生した問題をスポンサー内に適切に報告・エスカレーションする責任もあります。

担当の医療機関でモニタリング活動を行います。被験者の安全性確保とデータの信頼性という治験の大原則を担保するため、臨床試験計画書(プロトコル)やGCP、各国の規制に従って適切に治験が実施されているかを確認します。治験ごとに定められたモニタリングプラン、スポンサー・CROの手順(SOP)で、どのようなタイミングで何を確認するか決められており、これらに沿ってモニタリング活動を行います。

カルテなどの原資料を確認し、入手した治験データが正しいか、適切なプロセスで得られているかなどを確認します。

治験で得られた評価・観察データを医療機関にタイムリーにEDCシステムに入力してもらいます。また、EDCシステムよりデータのクエリーが生じた場合は、スポンサー・医療機関と協力して正しいデータを入力できるように問題を解決します。

担当の医療機関に割り当てられたマイルストンを計画通りに達成させる責任をもっています。マイルストンには試験の立上げ(Site Initiation)、被験者登録開始(FSI/FPI)、被験者リクルートメント、データロック、クローズアウトなどがあります。

治験終了時

担当の医療機関で全ての治験行為が完了していることを確認し、必須文書が揃っていることを確認します。医療機関の長やIRB(治験審査委員会)へ治験終了の報告を終えて、担当施設での治験をクローズします。

規制当局(日本の場合PMDA)の調査や、製薬会社の監査が担当の医療機関に入る場合、調査に参加します。治験では全ての活動を文書で再現できることが求められており、モニタリング活動も全てタイムリーに記録に残しておく必要があります。これをInspection Readinessと言います。監査で指摘事項が見つかった場合、その是正措置を講じることもモニターの役目です。

臨床開発モニターに向いている人

コミュニケーション力が高い

医師、看護師、薬剤師、事務局などの医療関係者と頻繁にコミュニケーションをとり、協力して治験を進める必要があります。また、スポンサーの中の様々な役割の人たちと協議することが多くあります。医療機関とスポンサーとのリエゾンとなるため、高いコミュニケーション能力が求められます。また、医師をはじめ医療機関関係者と話をするため最低限の医学的な知識も必要です。

営業力がある、得意な人

治験を予算内でタイムリーに進めるために、時にはハードな交渉も必要となります。対立を生まずに相手の協力を得る交渉力や調整力、時にはスポンサー内の協力・譲歩を得る社内調整も必要です。相手のニーズを正確に捉えて提案するような営業力も求められます。

出張が好き

担当するのは日本全国にある医療機関。訪問し、面談やモニタリング活動を行うため出張はかなり多いです。出張が重なり一週間家のベッドで寝てないということもたまにあります。出張先や移動中でも楽しめる(いつも通り仕事できる)方は向いているかもしれません。

臨床開発モニターになるには?

理系大学卒が条件となっているケースが多いです。実際には学部卒よりも修士卒が多いです。出身学部は薬学・医学といったヘルスサイエンスのバックグラウンドも持つ人が多いですが、その他の理系学部卒も多く理系であればモニターになるのに問題はないです。

最近ではモニタリング業務のアウトソース化が進んでおり、製薬企業でモニターになるのは狭き門となっています。アウトソースの受け皿であるCROは逆に採用が増えています。どうしても製薬企業で働きたいという場合は、CROでモニターとしての実力をつけてから転職することをお勧めします。

臨床開発モニターのキャリアプラン

モニターは医薬品開発職の中で入門職です。新卒採用、未経験採用も多く、モニターとして活躍している人数も多いため、最も入りやすい医薬品開発職のひとつです。

3年ほどモニターを担当すると一通りの業務を経験でき、次のキャリアが見えてきます。

モニターとしての経験を最も活かせるネクストキャリアは、同じ臨床開発の仕事の中でも上級職であるモニターリーダーやスタディマネージャーです。また、施設立ち上げに特化したSSUや、被験者リクルートメントに特化したSite Engagement、CRAの活動を社内からサポートするCTA(内勤モニター:出張がない)などもあり、興味やライフスタイルに合わせて次のキャリアを考えることも可能です。モニターとして専門性を高めるキャリアの方向性もあり、癌や神経変性疾患などの特定の疾患領域に特化したシニアモニターになるという道もあります。

臨床開発に限らずモニターで培った高いコミュニケーション能力はどこでも通用するので、特に若い方であれば治験のプロセスを一通り経験した後に自分のキャリアプランに合わせて臨床開発以外の職を選ぶことも十分可能です。

基本職上級職
臨床開発モニター
SSU
Site Engagement
CTA
モニターリーダー
スタディマネージャー
シニアモニター
その他DM
QM
PV
その他の基本職

臨床開発モニターの年収

モニターの年収は500-700万円です。新卒採用1年目だと400万円あたりからスタートで、経験を積むにしたがって年収は上がっていきます。

国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査」によると正社員の平均年収は496万円なので、モニターになれば若いうちから高い年収を得られるます。

生活するには十分な年収ですが、年収1000万円を目指す場合は一担当者としてのモニターでは難しく、より上級職へのキャリアアップが必要です。

まとめ

モニターは医療機関とスポンサーのリエゾンとなり、会社を代表して医療機関と接することが多い仕事です。高いコミュニケーション能力が求められ、医師をはじめ医療機関関係者と話すことから医学的知識も必要となります。

まだまだ治験は人海戦術でデータを集めてモニタリングを実施しており、しばらくはモニターの採用の需要も高く最も入りやすい医薬品開発職のひとつと言えます。

立上げから終了まで治験に携わることができ、治験とはどういうものかを臨床の現場から広く学ぶことができるのもモニターの特徴です。モニターで得た学びは他のキャリアにも活かすことができます。臨床開発を極めるもよし、他の開発職にキャリアチェンジするもよしで、まさに医薬品開発職に飛び込むのに最適な職種です。